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- シンガポール教育旅行 2011年7月

8月9日は、シンガポールの独立記念日。街中に大小たくさんの国旗をなびかせ、国中を挙げて盛大に独立を祝います。 そして、独立記念日が終わると、9月末に開催される、F1唯一のナイトレース、F1シンガポール・グランプリに向けて、街は熱気と活気を帯び始めます。シンガポールの熱い夜から目が離せません。

長野県内の公立高校として初めてシンガポールを訪れた長野県岡谷南高等学校では、シンガポール修学旅行の重要課題にキャリア教育を掲げ、同県に本社を構えるセイコーエプソンの現地法人であるシンガポール・エプソンの協力を得て研修に訪れました。海外で働く事がどういう事か知らない生徒たちがいる中、実際に日本人が海外で働く現場を見てもらうことは大きな意味をもつと考えています。ご担当の野澤誠一先生にお話を伺いました。
最大の目的はキャリア教育です。海外で働くことを具体的にイメージし、実現に近づけることができる生徒が増えてくれると嬉しいと思っていました。国際理解の機会にはホームステイもありますが、学年全体で取り組めるものを、と挑戦したのが海外修学旅行です。
本校には英語科もあり英語教育に力を入れているので、行き先は英語圏であることが条件のひとつでした。シンガポールにした決め手は、日本からも近く、異文化理解や国際理解教育ができるということ。宗教も言語も違う民族が一国で暮らすために、共通語として英語を使うなど工夫をしている、日本では見られない多様な文化が共存している場を実際に見せたいと思いました。
エプソンでのパネルディスカッションの様子
海外進出が珍しくない時代にもかかわらず、自分とは関係のない世界と捉えてしまっている生徒が多数です。今時海外で仕事をするつもりがないなどという考えは通用しないということを教えられればと思いました。
エプソン訪問時には、工場の見学後パネルディスカッションの場も設けてくださり、昨年採用されたばかりの方からベテランの方まで、それぞれの立場での体験談を聞くことができました。エプソンは地元の企業ですから生徒にとっては親近感もあり、身近な人たちが海外で働く姿を見たことで、自分が将来海外で仕事をすることも選択肢の1つとして意識しやすくなり視野を広げることができたと思います。
現地学校交流で訪問したテマセック・ポリテクニックにはコンピュータ授業の講師として常勤する日本人講師がいらっしゃり、そこで働くことになった経緯などをお話しいただきました。日本の大学の工学部へ進学しNECへ就職、そこで知り合った夫の故郷であるシンガポールで教鞭を執ることになったと言います。
皆さんのお話を聞いてわかったのは、海外で働くことを想定しなくとも機会は巡ってくるということ。そして、英語はあくまで伝達ツールであり、本当に大事なのは自分が「なに」を話せるか、どんな「スキル」を持っているか、それが世界に通用する中身であるか、が重要だということでした。今日、明日で結果が出るものではありませんから、自分の将来像を描きながら、英語以外の「スキル」をも磨く努力をしていけるようになればと思います。
交流校で郷土紹介のプレゼン
長野県諏訪地方の一大行事「御柱祭(無形民俗文化財)」を紹介中
県内の事例がありませんでしたし、企業研修がメインだったこともあり、シンガポール大学の学生に半日街を案内してもらったB&S(Brother&Sister)プログラム以外は独自に企画立てたものがほとんどです。
なかでも、グループごとに生徒たちだけでオーチャード地区の飲食店で夕食を食べてくるという試みはおもしろい体験になりました。「チェーン展開しているファーストフード店などでなく必ず地元のお店で食べてくること」とだけ決め地図を渡し、2時間くらい自由に食事を楽しんできてもらいました。注文など英会話の勉強になりますし、現地の方と直接交流することができ、レストランを貸し切る食事より安価で旅費の節約にもなりました。
また学校交流では軽食を食べながらフリートークをする“リフレッシュメント”タイムをつくり、直接会話する時間を増やしました。プレゼンテーション等で自国を紹介し合うのもよいのですが、異国の生徒同士がアニメや携帯など身近な話題で気軽に話せると、より話も広がり親しくなれますね。
旧フォード自動車工場(戦争博物館)を見学
国内修学旅行でも必ず平和学習があるように、シンガポールで平和学習のためまず訪れたのが旧フォード自動車工場(戦争博物館)です。シンガポールが日本の植民地=昭南島となる際、最終交渉を行ったYes-No会談が行われた場所でもあります。館内では植民地時代の状況がよくわかる20分間ほどの映像が上映されました。生徒たちは英語のナレーションの半分以上は理解できなかったと思いますが、映像を見ただけでわかったこと、感じるものがあり、過去に日本がしたことの事実に大きなショックを受けていました。さらに戦没者記念公園内の「血債の塔」前では、献花・黙祷を行い、戦争の犠牲になった人々の追悼式を行いました。
日本の教育では日本の見方で歴史背景を学ぶため、戦争被害の知識はあっても加害について知らない生徒がほとんどです。事前学習では、歴史については敢えておおまかに教えるに留めました。中途半端な知識を詰め込んで行くよりも、現地に立ち海外の視点から着目できることが真実を知る上で重要だと考えたからです。
→帰国後に生徒たちが制作した文集の中から、感想文を数作品紹介します。
シンガポール植物園内にある国立蘭園の前で
山に囲まれた田舎で育ち、海外経験が少ない生徒たちにとって、長時間飛行機に乗ることがまず新鮮でした。冬の長野を出発し、7時間後には気温35度の灼熱太陽の下です。同じ日の同じ地球とは思えない不思議な感覚がありました。
生徒たちには、「学校側が連れていってくれる」といった陽気さが少なからずあったでしょうけど、旅行中の様子や帰国後の感想を見ると生徒各々が海外経験を自分のものにしてくれたように思えます。渡航前に実施した英会話の特訓も、普段からこれくらいの意欲をもって励んでくれればと思うくらい生徒たちは本当に熱心でしたし、現地ではカタコトでも英語が通じて嬉しかった、身振りも加えれば何とかなることがわかった、など成果や反省を口にしてくれています。
買い物の際は間違えてお金を支払ってしまったかもしれない?と言う生徒もいて、異国ならではのハプニングもあり、普段はできない良い経験になりました。生徒たちに「遊びが無くて面白くなかった」と言われることが一番の心配でしたが、評価は上々、今後に続く成功例になったと思っています。
B&Sプログラムでは市内を自由に観光
シンガポールの発展の様子に驚き、日本はむしろ遅れていると感じた生徒もいました。たとえば訪問校の廊下には、休み時間等に生徒たちがインターネットで調べ物ができるように誰でもいつでも自由に使えるパソコンが置いてあり、日本の学校よりも最先端へいっていると思ったようです。
街は活気ある店が多く、現地の人たちも優しかったです。飲食店で空いている席を探す私たちを見つけて「こっちのテーブルが空いているから、おいで!」という感じで呼んでくれるなどとても親切でした。
また、アラブ系、ヒンドゥー系の民族衣装を身にまとった人たちが同じ電車に乗っており、多民族が一緒に暮らす国だということを目の当たりにしました。共存していることも素晴らしいのですが、それでいて尚且つ「平和」に暮らしていることに感心しました。まさに理想的な世界の縮図です。
最初はいわゆる海外アレルギーを避けられず、国内で十分、費用が高い、という声もあがりましたし、職員自身も決して海外経験が豊富とは言えず、自信を持って生徒たちを引率・指導できないというのも本音でした。しかし下見の段階で、シンガポールは治安が良く安全な国だとわかり、水・食事や健康などの衛生面に関しても問題ありませんでした。思い切って生徒を連れて行けば、将来につながる国内では得られない経験ができる機会になると思います。私たちも経験を積みよりよいものにしていくためシンガポール修学旅行を続けていくことができればと思っています。
―どうもありがとうございました。
日本語Webサイトで情報を提供しています。
シンガポール政府観光局の運営するウェブサイトでも日本語での教育旅行に係わる情報を得ることができます。ぜひご覧ください。











